2020年9月23日水曜日

ベーシックインカムを考える2

 コロナ対策として国民全員に給付金100,000円が支給された。人口が約1億2千万人として総額12兆円となる。

これは一時的にベーシックインカム(BI)が実行されたという事もできる。しかし全員給付の方法が慣れないためか支給に混乱をきたした。申請方法は郵送とマイナンバーカードの2通りであったがマイナンバーカードからか申請した方が早いという情報がありマイナンバーカードを持ってない多くの人がカード発行申請のため役所の押しかけた。またマイナンバーカードを持っていても使い慣れていないためか申請の際パスワードを規定回数以上誤入力しロックしてしまいロック解除のために役所に来る人も多数発生し、混乱状態となった。さらにマイナンバーカードと振込口座の紐付が多大な事務負担となった。そのため結局郵送の方が早いというドタバタが露呈した。ベーシックインカムにはマイナンバーカードの普及(現状20%未満)と口座の紐付きが必須だと痛感したのである。

この一律給付によりベーシックインカムについての議論が再熱しているらしい。(参考資料)

前回ベーシックインカムを考えた時は増税をしない前提で医療介護なども全て個人負担として考えていたが現実的には難しい。増税を前提としたベーシックインカムについて考えてみる。

2018年の社会保障給付費は年金56.7兆円医療費39.2兆円介護10.7兆円その他14.6兆円で合計121.3兆円である。

ベーシックインカムを年間1,000,000円/人(月83000円/人 3人家族だと月25万円)とすれば必要な費用は120兆円ほどになる。

ここで年金部分にベイシックインカムを導入すれば社会保障給付費は183.7兆円となる。財源は下図に基づき公費48兆円、保険料69兆円とすれば約120兆円で不足額約64兆円。20年度の税収予想額は63.5兆円なのでほぼ倍額になるが以前検討した資産税を導入すれば可能性はある。

(年金支払業務がベイシックインカムで簡素化するので行政コストの大幅な削減が期待できる)

(2018年4月11日の財務省財政制度等審議会財政制度分科会の資料「社会保障について」)

3人家族試算(夫婦+小学生) 月額
収入25万円 (ベイシックインカム)
家賃        8万円    アパート郊外2DK
社会保険料    4万円 
食費     6万5千円
光熱費    2万円
通信費    1万5千円
教育費他 3万円

上記の生活で満足なら働かないで興味ある事をすれば良い。金にならない事は無駄な事であるという認識は間違っている。金にならないことが予想もつかない成果を生み出す可能性は十分ある。
ただこれでは衣服、レジャー、生命保険、医療費等の費用がないので現実的には切り詰めるかパートで補う必要があるだろう。
裕福な生活が望みなら一所懸命に働いて稼げばいいだけである。
ベイシックインカムは社会主義国家のように同様の生活を押し付けるものではない。
富裕層にベイシックインカムは給付しないという考えかたもあるが給付に条件を付けるのはベイシックインカムの基本理念に反し、給付業務も煩雑になる。この問題に対しては累進課税で対応する。ベイシックインカムの収入を所得税の対象として100万円以下は納税額0円として仮に課税所得500万円で20%とすれば500万円以上で事実上ベイシックインカムの給付金100万円は回収できる計算になる。

ベイシックインカムは社会のセーフティーネットとして機能し成長主義社会によってもたらされた格差を是正する大きな力になる。
成熟社会においてはこのベイシックインカムと資産税が両輪になると考えている。

[参考資料]

ーーROAD TO NEXT STAGE  (所得税から 資産税へ)よりーー

資産税の控除額を5千万円とすれば対象世帯は全世帯数の8.8%。資産税対象額は350兆円、税率を5%にすれば17.5兆円になる
また民間企業の金融資産は1279兆円(2022年)といわれている。仮に半分を控除したとして対象額は*640兆円、税率を5%を課税すれば32兆円。合わせて約50兆円となる

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ベーシックインカムについての僕からの提案は、できれば受給者たちの1部がそれによって「21世紀のランティエになってくれることです。お金はまぁ生活するぎりぎりしかないけれど、暇と好奇心と冒険心だけは売るほどあると言う人たちがそれなりの頭数存在する事は、社会を風通しのよいものにする上では大変有効です。彼らが社会にもたらす「プラス」が、制度に依存して無為徒食するだけで何もしない人たちのもたらす「マイナス」より少しでも大きければ、成功だと判断して良いと僕は思います。(ランティエ:ヨーロッパ近代の金利生活者)

コモンの再生 内田樹より

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井上智洋 駒沢大経済学部准教授

日本も100,000円給付を実施したが、所得制限なしで一人ひとりに同額を配ると言う点で最もB Iに近い。

            —中略—

全国民が対象なので気兼ねなく受給でき、救済すべき人を取りこぼすことがない。B Iのみで生活していた人が働き始めても給付額は減らず労働意欲を損なわない。社会保障制度は簡素化され、行政コストも減る。

一方B Iには誤解も多い「働きぶりに関係なく所得が同一になる」と言うのが典型だ。だが、税金の取り方次第で格差を縮めることができる。B Iで給付するお金を累進課税の所得税の対象(課税所得)にすれば、富裕層が後で納税するのに対し低所得層は納税せずに満額もらうことになる。

            —中略—

 「人が怠けて働く働かなくなる」との批判もよく聞くが、給付額による。月400,000円も寄付するならともかく、70,000円程度なら多くの人は仕事を辞めないだろう。1974年から79年にカナダで行われた実験では、受給者の労働時間がわずかに減っているが、10代の子供が学校に買うようになったり、保護者が育児に充てる時間を増やしたりと、社会的に好ましい例が大半だった。

「社会保障を全て切り捨てる制度」と言うのも勘違いだ。失業や一人親家庭は「お金がない」問題としてB Iで解決できるが、老齢や病気、障害などの「ハンディキャップ」はそうではなく、支援を維持・拡充する必要がある。

            —中略—

マイナンバーを活用して把握した個人資産に課税する「資産税」などが望ましい。

(BI:ベイシックインカム)

毎日新聞2020年9月23日特集記事より抜粋


維新の会のベーシックインカム戦略


https://youtu.be/D_jPShQbSkM


https://youtu.be/nCuDVDsMhzY


https://youtu.be/TpKCk0bLDZg


追記2023/11/23


AIに聞いてみた。


Q

流動資産税を導入して、ベーシックインカムをによる社会を築く事に問題はありますか?

A

ベーシックインカムとは、国民全員に一定の金額を支給する制度であり、流動資産税は個人の現金や銀行預金などの流動資産に対して課税する制度です。


ベーシックインカムを導入することにより、社会的な格差や貧困を緩和する可能性があります。しかし、流動資産税による問題点も考慮する必要があります。


1. 富の再分配: 流動資産税が導入されれば、富裕層からの課税が増加するため、富の再分配が実現される可能性があります。しかし、富裕層は財産を海外に移転させるなどの回避策を取る可能性もあるため、国内の富の再分配に制限が生じる可能性もあります。


2. 経済成長への影響: 流動資産税の導入により、富の再分配が進む一方で、富裕層や企業が投資を控える可能性もあります。これにより、経済成長が阻害される可能性があります。


3. リスク回避行動: 流動資産税が導入されると、個人や企業はリスク回避のために資金を流動資産から他の資産へ移す可能性があります。これにより、資本市場や金融システムへの影響が生じ、経済への負担が増加する可能性があります。


4. 管理コスト: 流動資産税の実施には、個人や企業の資産の監視や課税手続きを行うための管理コストが必要となります。これには、税務署や監視システムの整備、情報収集のための追加費用などが発生する可能性があります。


以上のような問題点を考慮する必要がありますが、具体的な制度設計や社会背景によっては、ベーシックインカムと流動資産税の導入が社会の持続可能性や公正性に寄与する場合もあるかもしれません。