2016年2月5日金曜日

風が吹けば桶屋が儲かる

害虫駆除と生態系
ジカ熱という病気が蚊により伝染し南アメリカ地域で猛威を振るっている
ジカ熱は感染した本人にはあまり症状はなく、知らずに完治してしまうことがほとんどなのだが
感染した女性が出産したときその子供が小頭症になる確率が高いらしい。
小頭症は知的発達障害などを引き起こす
妊婦以外に関係ないわけではなくジカ熱に感染した人に刺した蚊が妊婦を刺して感染させることがあるので妊婦以外でも感染しないことが重要となる
新聞でジカ熱対策として蚊の繁殖を防ぐためにIAEA(国際原子力機関)が技術移転
という記事があった。

IAEAは蚊のさなぎに放射線を照射し不妊化する技術の開発を促進。不妊化した雄を大量に放し、野生の雌と交尾させることで、卵をふ化させず個体数を減少させる・・・
(毎日新聞2016/2/4)

蚊の発生を防ぐには殺虫剤散布が一般的だが薬剤散布は環境への影響が懸念される。
そこで不妊化させることで繁殖を防ぐという方法は画期的な感があるが
実は人為的に生殖能力を衰退させて個体数を減らす方法は60年ほど前にも行われていた。
環境問題のバイブルともいわれる「沈黙の春」ではX線で害虫(ハエ)のオスを不妊化させ大量に放ち、駆除に大きな成果をあげた例が紹介されている
さらに「沈黙の春」には以下のような意味深い記述がある
人間はさらにもうひとつ、重要なことを見 おとしていた。少なくとも軽視しすぎていた。前述のように、自然は多種多様の生物群が存在することで、それなりの安定を維持している。そのなかの一種ない し数種を撲滅することは、とりもなおさず全体のバランスをくずす結果になる。複雑な形の自然石がつみかさなってできた石垣から、一個ないし数個の石をひき ぬいたらどうなるか。影響はたちまち全体におよび、石垣そのものの大規模な崩壊をおこすにちがいない。
 確かに不妊化作戦は環境に対する負荷は薬剤散布よりはるかに少ないと思われる。
しかし生態系として捉えれば全く影響がないとは言えない。蚊が減少する事でそれらを捕食していた鳥類などに影響しその結果その鳥類が捕食していた他の虫の量が変化しそれが人間にも何らかの影響を与えるかもしれないのだ。
一種類の人間にとって都合の悪い生物だけを他に影響を与えず抹殺することはほぼ不可能である。

生態系とは「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいなイメージがある
そう考えると蚊に刺されないように注意(長袖、長ズボン)するとかボウフラが生育する水溜りを無くすなどの地道な方法も大切だと改めて思う。