2016年6月18日土曜日

ROAD TO NEXT STAGE (ベーシックインカムを考える)


ベーシックインカムは働かざるもの食うべからずを真っ向から否定する考え方で勤労を尊ぶ日本人には受け入れがたい印象がある
しかしこのシステムは多岐に渡る社会保障を廃止し現金支給により一本化してシンプルにする事により行政の負担を低減化する事が大きな目的でもある。
ベーシックインカムは「金はやるからあとは自分たちで何とかしろ!」ということでもあるのだ。

2013年の社会保障給付総額は110兆円(年金50%、医療30%、福祉等20%)である。
次に社会保障関連行政のスリム化(人件費等)を検討してみる。
現状の公務員人件費は27兆円で社会保障関連人件費を30%とすれば8兆円、運営資金等合わせて10兆円が削減できれば前記の給付額と合わせて120兆円がベーシックインカムの財源となる。
これは国民一人あたり年間約100万円、月83,000円となり3人家族であれば252,000円ということになる。
前回のROAD TO NEXT STAGEで私が提案した内容に基づいて考えた場合、資産税控除(流動資産5千万円以下)であれば税の負担は消費税のみなので元気なうちであればなんとかやっていけそうな金額だが国は社会保障の面倒を見ないので、医療費は100%自己負担となる。
これでは足りないと思えば働いて収入を得る必要がある。
 介護状態になっても自分でなんとかしなくてはならない老人の一人住まいでは月額83000円で介護や医療費を賄うことになりかなり厳しいだろう。
現行の国民年金の支給額は満額で年間80万円(月66000円)なので17000円ほど増額となるが医療費が全額負担となればすぐに赤字になる。
自動車の強制保険のように民間医療保険への加入を義務付ける事が必要だと思う。

現状保険料は62兆円で給付額の約60%(個人36兆円、事業主26兆円)となっている。
事業主負担は現状のままとし個人負担分を税金で賄うとすれば
資産税5%により現行の所得税、法人税より35兆円の増収となるのでその金額を保険料に充てる


問題なのはベーシックインカムでは貧困層も富裕層も同額支給という事である
これは社会保障というより国民の権利という考え方に基づいていると考えられる。
社会保障であれば平等ではなく貧困層に厚くしなくてはいけない。
富裕層(資産者:流動資産5千万円以上)には支払わないとすれば資産者を500万人とした場合一人100万円で5兆円となるのでその金額も保険料に充てる
そうなれば支給額は月87,000円になり3人家族であれば年収313万円。
これは所得税、保険料負担がないので手取額である。(消費税、強制保険は負担)


基本的な生活が保障されるベーシックインカムがもつ最も大きな影響は人間の生き方、哲学におよぶ事である。
生きるための仕事から生きる証としての仕事に移行するという事でる。
ベルトコンベヤー的な作業や定例化された作業はロボットに移行され人間が人間にしか出来ない仕事に移行する。作業から創作、思考活動への移行と言えるかもしれない。



生産から思考への移行は歴史的に見ても定常経済社会の大きな特徴になっている。

1度目:約5万年前、ラスコーの壁画に象徴される文化の萌芽。(狩猟生産から思考へ)
2度目:仏教、儒教、老荘、ギリシャ哲学、ユダヤ教が生まれた。(農耕生産から思考へ)
人類は今、3度目の「定常期」の入り口に立っている。(産業革命、経済成長という生産から思考へ)
http://moriyaminoru.blogspot.jp/2014/09/blog-post.html

2016年6月4日土曜日

ROAD TO NEXT STAGE (定常経済社会への道)


当ブログでも何度か投稿しているが私は経済成長を前提とした社会システムは限界であり、これからは定常経済を前提とした社会システムに移行しなければならないと思っている。これは移行というより社会システムの次の段階へのステップアップだとも考えている。
そこで定常経済へのステップアップを ROAD TO NEXT STAGE(定常経済社会への道)として今後、書き続けたい。



定常経済社会とはどんな社会なのか?
自転車はスピードが出ていれば倒れない。しかしスピードが落ちるとフラフラとして安定しない。そして止まってしまえば足を付かない限り転倒する。経済成長を前提とした社会はこの自転車と同じである。現状はほぼ0成長なので経済成長社会ではフラフラしてあらゆる分野に支障が生じているのだ。
定常経済社会は経済成長がゼロの経済成長社会ではなく、成長の止まった状態が正常な状態の社会である。それには止まったままでも倒れない必要がある。
そこで補助輪を付けることが必要となる。
補助輪があれば安定して止まっていることが出来る。止まって周りをゆっくりと眺めながらいろいろなことを考えることができる。気が向いたらまた漕ぎ出してもいい。
この補助輪にあたるのが充実した社会保障だと考えている。
補助輪はスピードを出して走っている時は邪魔だ。
ようするに社会保障が不備でも成長さえしていれば誤魔化せる。経済成長は七難隠すのだ
そして明治から今までその理屈でやってきた。
しかし人口減少時代を迎えた日本にはペダルを力強く踏む力がない。どうしても補助輪が必要なのだ。

社会保障とは、生活上の問題(病気・けが・出産・障害・死亡・老化・失業など)を予防、救済して生活の安定のために社会が所得を保障(富の再分配)し、教育や医療、介護などのサービスを提供する制度だと考えている。


そしてこれらの社会保障を担うのは
  • 国、地方公共団体(公助)
  • 地域コミュニティ (共助)
  • 個人 (自助)
 の3つに分けることができる。

公助には資金として税金、保険料、寄付金、借金(国債)など、共助は奉仕活動、寄付金、自助は自己負担となるであろう。

まず公助の主要な財源である税金について考えたい。


ROAD TO NEXT STAGE(所得税から資産税へ)

ROAD TO NEXT STAGE  (所得税から 資産税へ)

高速道路の進入路では加速する必要がある。スムーズに本線に合流するためだ。
本線では加速する必要はないのだが一台のバスがスピードにとりつかれた様に加速しつづけていた。
アクセルは床まで踏み着けられエンジンは悲鳴を上げている
タイヤはバースト寸前でホイールキャップは耐えきれずに吹き飛んでしまった。
ハンドルはふらつき横転寸前である。
なのにスピードを上げれば安定すると運転手は信じ、必死にアクセルを踏みつける。
このバスには乗客が一億二千万人乗っているが殆んどの人がそんな状態に気づかず座席で寝ている。
このバスが経済成長神話に取り憑かれた今の日本だ。
今こそ経済成長神話から目覚め次のステージである定常経済社会に進む時である。

定常経済社会は社会資本主義というイメージに近い。
 国民総公務員のような社会主義は労働意欲を減退させ破綻した。
資本主義は格差を生み様々な社会問題が噴出し限界を迎えつつある。
社会資本主義は稼ぎたい人は稼ぎ、富のある人は社会に還元し、全員がある程度の生活を保証される社会である。

そのためには税の革命が必要である
これは単純な税の改革ではなく社会システムを根本から変換するための考えである。

富のある人が社会に還元するために資産税について考えてみたい。
経済成長を前提としない定常経済社会では所得税、法人税を廃止し、流動資産(預貯金、株、内部留保金)に税金をかけるべきだと考えている。
稼いだお金には税金をかけないがため込んだお金には税金をかけるわけだ。これにより社会の金の動きが活性化することを期待できる。
 
流動資産税導入を現実的に考えてみる。まず第一に適切な控除額を設定する。
例えば不動産以外の資産が五千万円とすれば多くの人は課税されないだろう。
次に富裕層が多額の現金を隠すという事は十分考えられるが対策としては新紙幣の発行である。
旧紙幣はそのままでは使用出来ない様にする。もちろんいつでも銀行で新紙幣と交換できるが交換時にそれまでの資産税(+延滞金)が発生する事にすればよい。
また固定資産で同額の税をかけることで不動産投機を抑制する。
五千万円以上の流動資産がある人が毎年資産の確定申告をすることになる。
(資産が5千万円以下なら10億稼ごうと税金はゼロなのだ。)
所得税は廃止するので仮に流動資産が10.5億、年収が1億の人の場合、今までは年収1億に約5千万円の税金がかかっていた。その人が年間3千万円の消費をしていたとすれば資産は年間2千万円づつ増える事になる。
資産税5%を導入した場合は五千万円控除した資産10億の5%、五千万円の税金となり所得税の場合と同額だが資産は毎年増えるので10年後の税金は12億の5%で6千万円になる。
資産が増えない様に消費を増やせば経済は活性化するだろう。
定常経済社会では経済成長はないが経済が回っている必要はある。
(バスに例えれば高速道路を適性速度で巡行している状態)

さらに税収額について考察してみる。
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個人金融資産は2000兆円といわれている
野村証券の調査(下図参照)によると5億円以上の超富裕層の金融資産が97兆円(8.7万世帯)、1~5億円未満の富裕層が236兆円(124万世帯)、準富裕層(5000万以上1億未満)255兆円(341.8万世帯)、5千万以下が966兆円(4927.8万世帯)となる
資産税の控除額を5千万円とすれば対象世帯は全世帯数の8.8%。資産税対象額は350兆円、税率を5%にすれば17.5兆円になる
また民間企業の金融資産は1279兆円(2022年)といわれている。仮に半分を控除したとして対象額は*640兆円、税率を5%を課税すれば32兆円。合わせて約50兆円となる
また固定資産税の税率を3%(現行1.4%)にすれば税収は10兆円ほど増える。
現状の所得税と法人税で約30兆円なので増益となる。3%でも30兆円近い金額になるのだ。
5%の場合は収入と支出が均衡してれば10年間で資産は57%減、30年間では80%減 、50年間では93%減になる。当然資産税も同様に減収するが、資産税を回避するための消費が進めば景気が向上して消費税の増収も期待できる。
富裕層、優良企業資産に対しはこの程度の社会還元が必要だと考えている。
(*資産5000万円以上の世帯の資産合計から[5000万円*世帯数]を引いた金額)
 



 資産税は年々減少が予想されるので消費税、固定資産税などを増税していく必要があるだろう。
(2021年の消費税収入が約20兆円、固定資産税約10兆円)
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2021年の消費税収入が約20兆円 <20022/3/18修正記載>
 
<2016/6記載時>
個人金融資産は1400兆円といわれている。仮に流動資産が5千万円以上の所有者が500万人としその個人金融資産を1000兆円、控除額を5千万円とすれば対象額は750兆円、税率を5%にすれば37兆5千億円になる
また企業の内部留保総額550兆円といわれているので同じように税率を5%を課税すれば27兆5千億。合わせて65兆円となる

 
<追記>
資産税は経済の循環、格差是正に有効だと考えている
稼いでいる人からは取らずに溜め込んでいる人から取る。
金を動かしている人からは取らずに金を止めている人から取る
これにより経済の停滞を防ぎ循環させる
実現には個人資産を把握する事が必要でそのためにマイナンバー制度を活用する。
個人の資産を国が把握することには抵抗を感じるが受け入れざるを得ない
定常経済社会は社会資本主義的イメージが強いと考えている。
資産税の導入により格差が是正していけば全体的にみれば資産税の収入は減少する
定常経済社会を維持するためのエネルギーは消費税が基本だと思っている。

ROAD TO NEXT STAGE (定常経済社会への道)