2014年2月17日月曜日

成熟社会


熟年国家の続編です。)

成長社会から成熟社会へのパラダイムシフトを向かえている
これに気づかず今までのような経済成長社会しかイメージできない人は多い。
これまでのような成長が不可能は理由は人口がすでに減少しているためである。
今後数十年は人口が減少し成長社会が終焉を向かえるのは避けようがない事実である。
では成熟社会とはどんな社会なのか?
私は「女性中心社会」だと考えている
成長期のような競争社会では男性的な行動原理がある程度有効であったが成熟社会では競争より共生が重要となり女性の行動原理に期待できる。
(河合隼雄の母性原理と父性原理によると母性が「わが子はすべてよい子」、父性は「よい子だけがわが子」といった特徴を持っているらしい。)
しかし女性の社会進出が進めば出生率が低下する可能性がある。
このまま人口減りつづければ成熟社会ではなく衰退社会となってしまう。
安定した成熟社会を築くためには安定した人口に収束していかなくてはならない
人口を超単純に考えてみる
子供が生めるのは女性だけで男性は生めない
胎児の性別はXY染色体の組み合わせで決まるので男女の出生割合はほぼ半分づつになる
男女比1:1なので女性が2人子供を生まなくては人口は維持できない。
病気、事故等で死亡してしまう事を考えれば出生率を2.0以上にする必要がある。
現在の出生率は1.4程度で、戦後のベビーブームでは出生率は4.3人以上であった
どうして出生率が下がってしまったのか
様々な要因があると思うが私は社会の家族システムの細分化、女性の高学歴化が大きな要因だと思う。
育児や介護は大家族のような廻りの目が多い方が対応しやすい。
家督制度から民主化といった大きな流れから大家族から核家族へと分化され
さらに情報社会化等により生活の多様性が進み核家族は個人へと細分化されている。
(リビング生活から個室生活へのシフト)
このような環境では女性が一人で子供を生み、育てるといった事への不安、また女性の高学歴化が出産による離職といった選択肢を避けるようになる。結婚しても子供はいなくてもよい、あるいは一人いれば十分と考える夫婦が多くても不思議でない。これでは出生率2.0以上は無理である。
しかし男は子供を生めないが育てることはできる。女が出産し、男が育てるのだ。
育メンなどといわれ育児ごっこをやるといったレベルの話ではなく専業主夫になってでも育児に真っ正面から取り組む。
現状では専業主夫というとかなりマイナーな存在であるがこれが当たり前になるくらいの社会全体の意識改革ができれば女性は出産して復職するといったことが当たり前な女性中心社会となる。
また二世帯住宅、二世帯対応集合住宅のようなお互いの独立性を維持しながら親子世代が隣接して生活するのは介護・育児等に関してはメリットが多い。夫だけでなくその父母世代で女性中心社会をサポートしていく。
出産、育児をサポートすれば人口が増加し再び成長社会へとシフトしていくのではないか?という考え方もできるが
私は過度な人口減少を食い止める程度の効果であり以前のような「産めよ増やせよ」的な状況にはならないと考えている
それは当時のような貧困、物欲が支配した社会ではないからである

成熟社会の大きな特徴は成長社会のような「所有」により生活が豊かになるといった価値観から「シェア」により豊かな生活をするといった価値観へのシフトだと思う。
最近シェアカー、シェアハウス等が話題になっているが物、空間といったハードをシェアーするだけではなく、技術、経験、労働といったソフトもシェアーする。これは老人パワーの活用も期待した細分化されてしまった個人を地域でつなぎ合わせる共助コミュニティ社会システムである。


成熟社会という言葉は40年以上前にイギリスのノーベル物理学者ガボールの著した『成熟社会』(1972)から使い始めたらしい。以下著書の要約
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成熟社会とは、物質万能主義を排し、経済成長や大量消費社会のかわりに、高水準の物質文明と共存しつつも、精神的な豊かさや生活の質の向上を最優先させるような、平和で自由な社会
  1. 自然との闘いから人間性との闘いへ
  2. 物質的・手段的価値から精神的・表出的価値への推移(=成熟)

  • 消費社会の不毛と倦怠(けんたい)の 克服
  • 知能偏重から知能と倫理の調和
  • 善意と幸福を周囲に広げる人間の形成
  • 強制と支配ではなく自由と責任と連帯の拡充
  • 多様な個性と価値観を尊重し許 容する寛容な民主的社会の実現


生活の質の向上による社会の漸進的活性化を意図
人間にとって真の豊かさとは 何かを追求

 ---------------------------------------------日本大百科全書(ニッポニカ)の解説要約
40年以上前に近未来社会として提唱されたのだ。経済学者、社会学者ではなく物理学者というのがおもしろい。
当時は単独国家としての未来像であったがその後経済のグローバル化により他の発展途上の成長社会国家を経済的に取り込み経済成長をどうにか続けているのが現状ではないだろうか。



「参考」
ファミリーサポート事業(地域による育児のサポートシステム)

・シェアハウスで異世代同居 シニア×若者共生探る 
独立性確保と意思疎通カギ 
 新しい暮らし方として5年ほど前から脚光を浴びてきたシェアハウス。利用は若者中心というイメージが強かったが、最近はシニアと若者が一緒に住む試みも始まっている。(日経新聞 平成26年2月)

・ともに子育てシェアハウス ひとり親世帯も安心 
ご近所で一時預かり/シッター派遣 (日経新聞 平成26年2月)

・シェアハウス 間口広く 
音楽・ゴルフ仲間集う 疑似家族で安心感 
 居間などを入居者が共有するシェアハウスが多彩になってきた。ゴルフや音楽などの趣味に加えて、ひとり親だけが集まる物件も相次ぎ開設。賃料は周辺相場に比べて同程度だ。利便性だけでなく、一つ屋根の下で暮らす疑似家族のような楽しさや安心感が人気の背景にある。(日経新聞 平成26年2月)