2026年9月18日金曜日

65歳まで累計3250万円を無条件給付

 全世代型年金制度(改定案)

年間50万円を0歳から死亡まで、すべての国民に給付する。
0歳から65歳までなら、累計3,250万円になる。

― 富の社会的循環を基盤とする新しい社会保障制度 ―

1.制度の基本理念

現在の日本の社会保障制度は、基本的には、

働く世代から保険料・税を集め、病気、失業、子育て、老後など、必要が生じた人に給付する

という「必要になった人を支える仕組み」です。

これに対して本制度は、

国民全員に最低限の経済的基盤をあらかじめ与え、その上で必要な人には追加的な社会保障を行う

という構造をとります。

重要なのは、これを単なる「ベーシックインカム」として捉えないことです。

本制度の根幹は、

社会に蓄積された富を、一部に固定させず、社会全体に再循環させること

にあります。

そのため、資産課税は単なる財源確保策ではなく、富の循環を促す一つの手段として位置づけます。


2.全世代型の基礎年金

基本給付

0歳から死亡まで、すべての国民に同額の基礎年金を給付します。

現段階では、

年間50万円/人

を基本案とします。

月額にすると約4万1,700円です。

これは「これだけで生活できる金額」ではありません。

あくまで、

生存と生活の最低限の経済的基盤

として位置づけます。

したがって、就労による所得を否定する制度ではありません。


3.65歳以上には老齢年金を加算

ここが現行制度との連続性を保つ重要な部分です。

65歳以上については、50万円の全世代基礎年金に加えて、

老齢年金 α

を支給します。

令和8年度の老齢基礎年金満額は月70,608円、年額では約84.7万円です。

したがって単純化すれば、

50万円+約34.7万円=約84.7万円

となります。

ただし、実際の制度設計では全高齢者に一律34.7万円を加えるのではなく、

  • 現在の年金受給権
  • 保険料納付期間
  • 既存の老齢基礎年金との関係

を考慮して調整する必要があります。

したがって、

「65歳になったら50万円+老齢年金を受け、現在の基礎年金水準をおおむね維持する」

というのが制度の基本的な考え方になります。

そして重要なのは、制度開始時に65歳以上だった人だけを対象にするのではないことです。

制度開始後に65歳になる人も同じルールで扱います。




4.厚生年金は維持する

この制度では、現行の厚生年金の報酬比例部分を基本的に変更しません。

したがって、会社員であれば、

全世代基礎年金
+ 老齢年金
+ 厚生年金

という構造になります。

これは非常に重要です。

厚生年金まで大幅に再設計すると、現役世代の保険料負担、企業負担、既存受給者の権利など、制度全体を大きく変えることになるからです。

したがって、この案では、

「新しい全世代基礎年金を上に載せる」

という考え方を基本とします。


5.保険料は給付とは別のものとして扱う

ここも制度設計上、明確にする必要があります。

例えば、年間50万円の基礎年金を受け取る人が、年間20万円の国民年金相当の保険料を払ったとしても、

給付額は50万円です。

20万円を差し引いて「実質30万円の年金」とするのではありません。

  • 給付=50万円
  • 保険料=20万円

という別々のキャッシュフローです。

財政計算でも、この二つを混同しないことが重要です。


6.財政規模

人口を約1億2,268万人として試算すると、

50万円 × 1億2,268万人
= 約61.3兆円

です。

しかし、65歳以上には老齢年金部分を追加する必要があります。

また今回の提案では消費税の2%増税を含みますのでその補填として年間6万円を増額します


65歳以上を約3,620万人と仮定し、単純に現在の基礎年金満額約84.7万円+6万円まで補うと、

約40.7万円 × 3,620万人
= 約14.8兆円

となります。

したがって、

給付

年間規模

全世代基礎年金

約61.3兆円

老齢年金加算

約14.8兆円

合計

約76.1兆円

となります。

現行の基礎年金制度から引き継ぐ財源を約27兆円と置けば、

新たに必要となる財源:約49.1兆円/年

となります。

これはあくまで概算です。

実際には、現在の基礎年金受給者の平均受給額や納付期間、制度移行時の経過措置などを反映した精密なモデルが必要です。


7.所得からの一部回収 ― 「年金税」

この制度のもう一つの特徴です。

全員に50万円を給付した後、

所得のある人から、その所得に応じて一部を「年金税」として回収する

仕組みを設けます。

ここでは、

所得がない人には年金税がかからない

という原則を明確にします。

所得によって負担額が決まり、所得が増えるほど徐々に回収率が上がる累進的な方式とします。

年間所得

年金税の考え方

350万円以下

0円

350~700万円

段階的に増加

700万円以上

年金額相当回収

年金として50万円を給付したうえで所得のある人からその一部を回収するため、

給付は普遍的、負担は所得に応じて累進的

という構造になります。

ただし65歳以上からは年金税は徴収しません。(現状の基礎年金制度との整合)


8.年金税の税収

給与所得だけではなく、

  • 給与所得
  • 事業所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • その他の所得

などを対象とします。

現段階では、

年金税:約10兆円/年

を政策シナリオ上の試算値とします。

このうち給与所得からの税収を約7兆円程度と想定し、その他の所得を加えた概算です。


9.資産税は「流動資産税」とする

この制度の重要な特徴です。

課税対象を「すべての資産」とせず、

  • 預貯金
  • 現金
  • 株式
  • 投資信託
  • 債券
  • その他の金融資産

など、流動性の高い資産を対象とします。

一方、

  • 土地
  • 建物
  • 事業用固定資産

については、原則としてここでは対象外とします。

これらについては固定資産税など別の制度が存在するため、二重課税を避ける考え方です。

税の徴収は相続税と同様に申告を基本としつつ、政府機関による調査・確認を行います。


10.流動資産税の税率

個人の流動金融資産

税率

5,000万円以下

0%

5,000万~1億円

1.5%

1億~5億円

2.0%

5億円超

3.0%

ここで重要なのは、資産全体にその最高税率を掛けるのではなく、

各階層部分にだけ対応する税率を掛ける累進課税

とすることです。

例えば資産6億円なら、

  • 最初の5,000万円 → 0円
  • 次の5,000万円 → 1.5%
  • 1~5億円部分 → 2%
  • 5~6億円部分 → 3%

という計算になります。

したがって、資産額が課税境界を少し超えただけで税負担が急増することを避けられます。


11.流動資産税の税収

個人については、世帯単位の資産分布をそのまま個人課税に使用することはできません。

したがって、現段階では、

個人流動資産税:約12兆円

を初期の政策シナリオ上の目標レンジとします。

これは確定的な税収ではなく、今後、個人単位の金融資産分布に基づいて再計算する必要があります。


12.法人にも流動資産税を適用

法人についても、

  • 現預金
  • 有価証券
  • その他金融資産

などを対象とします。

ただし、法人の場合は個人以上に慎重な設計が必要です。

企業の総資産には、

  • 土地
  • 建物
  • 機械
  • 在庫
  • 売掛金
  • 事業用設備

などが含まれるためです。

したがって、「法人総資産×3%」という単純な計算は適切ではありません。

以前の試算に用いた法人資産639兆円を仮に使い、50%を課税対象から除外して累進課税として平均2%を掛けると、

639兆円 × 50% × 2.0%
= 約6兆円

となります。

試算の

個人分と法人分を合わせ、

流動資産税:約18兆円

を政策シナリオ上の試算値とします。



13.固定資産税は別制度

固定資産税についても改革を行います。

現在の標準税率1.4%を

所有者の所得、資産に応じて1.4%〜3%に設定します。(平均を2%に設定)

これによって、

約6.7兆円の追加税収

を想定します。

ただし、住宅や事業用不動産に対する負担が大きく変わるため、

  • 居住用住宅
  • 中小企業
  • 事業用施設
  • 空き地
  • 投機目的の不動産

などで税率や控除を分ける必要があります。


14.相続税

富の集中が世代を超えて固定されることを抑えるため、

相続税を強化する

という考え方も組み込みます。

追加税収の目安を、

約6兆円

とします。

これは、

生きている間の資産循環を担う流動資産税

と、

世代間の資産移転を対象とする相続税

を組み合わせる考え方です。


15.消費税

消費税については、増税によって財源を確保します。

基本的なイメージは、

区分

税率

食料品

10%

一般の商品・サービス

12%

高級品・奢侈品

15%

です。

一般の商品・サービスについては現行の10%から12%へ引き上げ、食料品についても現行の軽減税率8%から10%へ引き上げます。

現行の消費税収26.7兆円から増税分を試算すると34.4兆円になります。7.7兆円増額


一方、消費税の逆進性への対応として、

低所得世帯には、世帯の食品購入にかかる消費税相当額を給付する

仕組みを設けます。

この給付は、現行制度と同様に、個人単位ではなく世帯単位で行います。世帯の所得状況を基準として低所得世帯を判定し、その世帯に対して食品にかかる消費税負担相当額を給付します。

これは、現在検討されている低所得世帯に対する消費税負担相当額の給付という考え方を活用するものです。

低所得者の年間食品購入額を80万円とすれば消費税額は7.3万円

仮に対象世帯が2000万世帯なら約1.5兆円になります。

したがって、単純に「消費税を上げる」のではなく、

消費税によって広く財源を確保し、その負担が相対的に重くなる低所得世帯には、世帯単位の給付によって補填する

という構造になります。

追加税収は、

約6兆円 (7.7-1.5=6.2)

を政策シナリオ上の想定とします。

なお、低所得の高齢者世帯については、低所得世帯向け給付と高齢者向け補填を比較し、金額の大きい方のみを給付することとします。



16.眠っている資産の社会的循環

流動資産税には、財源確保とは別の意味があります。

巨額の金融資産が長期間ほとんど経済活動に使われず、資産として蓄積され続ける場合、その一部を社会に循環させることができます。

イメージとしては、

資産の集中・滞留

流動資産税

社会全体への給付

消費・教育・子育て・住宅・サービス等への支出

企業の売上・所得

投資・雇用・消費

社会全体への富の循環

という流れです。

したがって、流動資産税は単なる「富裕層からの税収」としてではなく、

社会に滞留している資産を、社会全体の経済循環へ戻す仕組み

として位置づけます。

ただし、資産課税によって必ず経済成長が起こると断定するのではなく、資産の集中・滞留を緩和し、消費や投資に回る資金を増やすことによる経済効果が期待される、という位置づけとします。


17.将来的な税源

この制度では、資産税を永久に最大化することを目的としません。

むしろ、

富の集中が強い初期段階では資産課税を活用し、社会構造が変化するにつれて別の税源へ移行する

という考え方です。

将来的には、

  • 金融取引税
  • デジタルサービス税
  • AIによる労働代替への課税
  • 炭素価格・排出量取引
  • 国際的な法人課税

などを組み合わせます。

想定規模は、

  • 初期:約0~4兆円
  • 中期:約10~15兆円
  • 長期:約20~25兆円

を目標とする段階的な構造とします。


18.全体の財源と収支

現段階の政策シナリオをまとめると、次のようになります。(端数切捨)

財源

年間規模

現行基礎年金から引き継ぐ財源

約27兆円

年金税

約10兆円

流動資産税

約18兆円

固定資産税改革

約6兆円

相続税強化

約6兆円

消費税改革

約6兆円

将来税

初期約0~4兆円

合計

約73~77兆円程度

一方、給付は、

給付

年間規模

全世代基礎年金

約61.3兆円

老齢年金加算

約14.8兆円

合計

約75.1兆円

となります。

したがって、50万円案では、

給付:約75.1兆円
財源:約73~77兆円

という規模になります。

なお、約27兆円については「追加税収」ではなく、現行基礎年金制度から引き継ぐ財源です。


19.生活保護制度との関係

生活保護を廃止する制度ではありません。

50万円だけでは生活できない人には、従来どおり追加的な公的扶助を行います。

ただし、すべての人に50万円が存在するため、

  • 収入はあるか
  • 資産はいくらか
  • 扶養できる親族はいるか
  • 本当に生活に困っているか

をゼロから審査して初めて最低限の所得が発生する構造とは変わります。

そのため、

「生存のための最低限の所得を得ることについて、行政の許可を求める」

という性格が弱くなります。

ただし、生活保護そのものの審査がなくなるわけではありません。

50万円を超えてなお生活できない人については、引き続き追加的な審査が必要です。


20.子育てへの効果

50万円を個人単位で給付すると、

家族構成

年間給付

夫婦

100万円

夫婦+子ども2人

200万円

夫婦+子ども3人

250万円

となります。

これは「子ども手当を増額する」という設計ではありません。

子どもも一人の社会構成員として基礎所得を持つ

という考え方です。

これによって子育ての経済的負担が軽くなる可能性はありますが、出生率がどの程度変化するかは別問題です。

住宅費、教育費、雇用、結婚年齢、保育環境、男女の就業状況など、多くの要因が関係するため、

「50万円給付によって少子化が解決する」

とは考えません。

ただし、子どもを持つ世帯ほど給付総額が増えるという構造は明確な特徴です。


21.労働への影響

「基礎所得をもらえば誰も働かなくなる」という単純な構造ではありません。

年間50万円では、それだけで現在の日本で一般的な生活を維持することは困難です。

一方で、

  • ブラックな職場から離れる
  • 転職活動をする
  • 職業訓練を受ける
  • 病気や介護で一時的に仕事を離れる
  • 子育て期間を確保する
  • 起業を試みる

といった選択について、生活が完全に無収入になるリスクを小さくする可能性があります。

逆に、労働供給が減少する可能性もあり、これは実証研究を用いて慎重に検証する必要があります。


22.資産税収が減少するという「逆説」

この制度には非常に興味深い特徴があります。

通常なら、

「税収が減ったら制度は失敗」

と考えます。

しかし、この制度では必ずしもそうではありません。

例えば、資産税収が、

18兆円 → 15兆円 → 10兆円

と減少したとします。

その原因が、

  • 富裕層の海外移転

であれば問題です。

しかし、

  • 資産集中が緩和された
  • 中間層に資産が分散した
  • 大規模な資産蓄積が相続によって固定されにくくなった

という結果なら、制度が目指していた「富の循環」が進んだ結果として税収が減った可能性があります。

もちろん、税収減だけから制度の成功を判断することはできません。

しかし、

「資産税収を永遠に最大化すること」が制度の目的ではない

という点は、この制度の重要な特徴です。


23.社会循環への貢献を顕彰する仕組み

資産課税を単なる「富裕層への負担」と捉えないため、本人の承認を条件として、高額な社会的負担を行った人を顕彰する制度も検討します。

例えば、

「社会循環貢献者」

などの称号を設け、

  • 流動資産税
  • 相続税
  • その他の社会的拠出

について一定額以上を負担した人に対し、本人の希望・承認がある場合に称号を付与します。

ここで重要なのは、

「資産を多く持っていること」を称えるのではなく、「社会に多くの資産を還元したこと」を顕彰する

という考え方です。

資産額そのものを公表する必要はなく、本人が希望する場合に限って、社会への拠出実績を顕彰します。

また、この称号には税制上の優遇や政治的特権などを付与せず、あくまで社会的な顕彰とします。

これは、富裕層を社会の敵とするのではなく、

社会で成功して資産を築いた人が、その一部を社会に還元することを社会的に評価する

という文化を形成することを目的とします。


24.この制度の最大の特徴

この制度を単なる「ベーシックインカム」と呼ぶと、本質が少し見えにくくなります。

むしろ、

「富の社会的循環制度」

と考えた方が全体像を捉えやすいでしょう。

構造としては、

富の集中

流動資産税・相続税等

国家による再分配

全世代への基礎給付

生活基盤の安定

消費・教育・子育て・転職・再就職・介護などへの余力

社会全体への富の再循環

という循環です。

さらに、資産の滞留が解消され、消費や投資に回る資金が増えることによる経済効果も期待します。


25.最終的な制度イメージ

給付

全世代基礎年金

  • 0歳~死亡
  • 一人年間50万円
  • 所得・資産による減額なし

老齢年金

  • 65歳以上
  • 基礎年金に追加
  • 現在の基礎年金水準をおおむね維持

厚生年金

  • 報酬比例部分は基本的に現行維持

生活保護

  • 維持
  • 基礎年金で不足する人に追加給付

財源

現行基礎年金財源:約27兆円

年金税:約10兆円

所得による累進的負担。
基礎控除額350万円を基本案とする。

流動資産税:約18兆円

個人・法人の金融資産等を対象とする政策シナリオ上の試算値。

固定資産税改革:約10兆円

相続税改革:約6兆円

消費税改革:約6兆円

低所得世帯には、世帯の食品購入にかかる消費税相当額を給付する。給付は現行制度と同様に世帯単位で行い、個人単位では実施しない。

将来税

金融取引税、デジタルサービス税、AIによる労働代替への課税、炭素価格、国際的法人課税等へ段階的に移行。


26.現時点での結論

これまでの議論を一つの制度としてまとめると、これは単純な「ベーシックインカム導入案」ではありません。

むしろ、

「社会に蓄積された富を再分配し、全世代に最低限の経済的基盤を与え、その基盤を通じて再び社会に富を循環させる制度」

という構想です。

年間50万円という基礎給付なら、全世代への給付は約61.3兆円。

65歳以上への老齢年金加算を含めても、概算約74兆円です。

これに対して、

現行制度から約27兆円を引き継ぎ、約47兆円を新たに調達する

という構造になります。

今回検討した財源案では、

  • 年金税:約10兆円
  • 流動資産税:約18兆円
  • 固定資産税改革:約6兆円
  • 相続税強化:約6兆円
  • 消費税改革:約6兆円

などによって、約50兆円規模の新規財源を想定できます。

したがって、現段階の試算では、

給付:約74兆円
財源:約77~81兆円

という、概ね均衡する制度規模になります。

もちろん、これらの税収は確定値ではありません。特に流動資産税、年金税、固定資産税については、実際の課税ベース、行動変化、海外移転、法人の資金保有、所得分布などを反映した精密な試算が必要です。

しかし、この制度の目的は最初から税収を最大化することではありません。

目指すのは、

富が一部に固定され続ける社会から、社会に蓄積された富が全世代を通じて循環する社会への転換

です。

その意味で、資産課税による税収が将来減少することさえ、富の集中が弱まった結果であれば、この制度が目指す社会構造の変化の一つとして捉えることができます。

そして最終的には、

「富を持つこと」そのものを否定するのではなく、
「社会から得た富の一部を社会へ循環させること」を評価する。

そのような価値観を制度の中に組み込むことが、この「全世代型年金制度」の大きな特徴となります。

この制度は今まで給付されなかった0−65歳までに総額3250万年が無条件で給付されるということです。