2026年7月7日火曜日

昆虫の黙示録

 

私は那須と東京の二拠点生活をしているが最近昆虫が減っていると感じていた。以前は夏ホタルが10匹ほど見られたが今年は1匹しか確認できなかった。また網戸などにはカナブンや蛾など多くの昆虫が張りついていたが最近は全くいない。最初は「この地域がここ1〜2年の調子がおかしいのだろうか」と思っていた異変が、実は地球規模で底が抜けるように進行している構造変化の一部だったと知り愕然とした。

「インセクト・アポカリプス(昆虫の黙示録)」とよばれているようだ。世界中で昆虫の数(個体数)や総重量(バイオマス)、そして種多様性が凄まじいスピードで激減している現象を指す言葉で2010年代後半から、多くの科学者やメディアが「地球規模の生態系崩壊のサイン」として強い警告を鳴らす際に使われるようになった。単に「特定の珍しい虫が絶滅危惧種になる」という話ではなく、かつてどこにでもいたカナブン、蛾、ハエ、ハチ、そしてホタルのような「ありふれた虫たち」の全体のボリュームが、底が抜けたように減っているのが最大の特徴だ。

虫嫌いな人からみれば「虫がいなくなって快適!」などと思うかもしれないがとんでもないことだ。気候変動のダメージを最もダイレクトに、かつ致命的な形で受けるのが昆虫たちで昆虫がいなくなれば生態系が破壊され社会の土台が崩壊し人類は打つ手がなくなる。人類の危機だ。

2017年にドイツの研究チームが発表した論文で 保護区に指定された自然豊かな森や環境で27年間にわたり虫を採集し続けたところ、昆虫の総重量が75%以上も減少していたことが判明した。手つかずの自然が残る場所でさえ、虫たちが文字通り「消えていた」ことがわかり世界に大きな衝撃を与えた。

主な原因は、以下の4つが複雑に絡み合っている(複合汚染)と考えられている。

  • 生息地の喪失と断片化: 都市開発や、効率を重視した大規模農地の拡大により、虫たちが生きる草地や身を隠す藪が分断され、消滅している。

  • ネオニコチノイド系農薬などの影響: 現代の農業で広く使われる殺虫剤は非常に強力で、標的以外のハチやトンボ、地中の環境を作る虫たちまで広範囲に、かつ長期的に傷つけている。

  • 気候変動(温暖化と乾燥): 季節のサイクルが狂い、植物が芽吹く時期と、虫が羽化する時期に「ズレ」が生じている。また、冬〜春の極端な乾燥や猛暑は、地中で過ごす幼虫たちに致命的なダメージを与えている。

  • 人工的な光(光害): LED照明などの普及により、夜行性の昆虫の行動や繁殖のサイクルが狂わされている。

虫が消えると、世界はどうなるのか?

1. 食物連鎖の崩壊(鳥やカエルの絶滅)

ホタルやヒグラシが減れば、それを主食にしている鳥(ヒナの餌はほとんどが虫です)、カエル、トカゲ、クモなどが飢えてしまいます。実際に、ヨーロッパでは昆虫の減少と完全に比例して、一般的な野鳥の数がここ数十年で数億羽規模で激減しています。

2. 植物の繁殖が止まる

世界の野生植物の約80%、そして私たちが口にする作物の3分の1(リンゴ、イチゴ、コーヒー、トマトなど)は、ハチやアブ、チョウなどの昆虫が「受粉」を媒介することで実を結びます。虫がいなくなれば、これらは子孫を残せず、私たちの食卓からも消えることになります。

3. 地球が「ゴミ屋敷」になる

糞虫(フンチュウ)やシデムシ、多くの蛾の幼虫などは、動物の死骸やフン、落ち葉を分解して土に還す重要な「掃除屋」です。彼らが機能しなくなれば、物質の循環がストップしてしまいます。

多くの生物学者は、この現象を**「気づかれにくい、静かな絶滅」**と呼んでいます。大型哺乳類のように目立たないため、私たちが「最近、車のフロントガラスに虫がぶつからなくなったな」「網戸に虫が来ないな」と気づいた時には、すでに致命的なレベルまで進行しているケースが多いのです。



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